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年: 2002年

ゲーテにならって

徒然なるままに(随想)

“ehr Licht! “ 「もっと光を!!」

ドイツの文豪ゲ-テ(1749-1832)は文学者として天才であるばかりでなく、自然科学者として動植物、鉱物を研究し、色彩論をあらわしてニュ-トン物理学と対決した。またワイマ-ル公国の宰相を長年務め,政治家としても第一流の所謂マルチ人間であった。

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彼は、近代科学が自然を物として分析し切り刻み、そこから強引に法則なるものを引き出そうとするやり方には、我慢ならなかった。

彼にとって自然は豊かな生命体であり、そこに働く大いなる生命の力、つまり愛の力を彼は生涯にわ> たって求め続けたのである。それが彼の文学となり、幾人もの女性との愛の体験となり、70才を超えて17才の少女ウルリ-ケに対する熱烈な恋の原動力ともなった。彼はこの恋をかの「マリエンバ-トの悲歌」という頌に昇華している。

最近の科学技術の進歩はめざましい。

IT時代をむかえ、私のような文系の人間でもパソコンなしでは過ごすことが出来ない。しかし進歩の方向はゲ-テの最も反対した人間無視に進んでいるのではないだろうか。人々は一日の大半をパソコンあるいは 携帯電話といった無機物を通して他人との対話に費やしているがかえってそれらに使われているかのように見えるのだが。

さて私自身は散歩のわき道として、オ-ディオアンプ作りと音楽の趣味を持っている。それも真空管アンプである。私の真空管とのつきあいは中学一年の時に始まり、ドイツ語とのつきあいよりも古い。終戦直後の当時、部品も何もない時代、短波放送の受信が解禁になり、それを聴きたいがコイルがなく自分で巻くしかない、またスピ-カ-も壊れたものを手に入れ、ボイスコイルを巻き直し、コ-ンは襖紙のとりの子を使って張り替えるという時代であった。

本学初代学長の錦織清治先生は「実学」を教育の柱として立て、ペンチとハンダごてを使い実際に何でも出来る技術者の育成を めざされたことは、古い卒業生なら記憶にしみ込んでいることであろうが、まさにペンチとハンダごてで何もかもやってしまわねばならかった。これがさらにSPレコ-ドの皿まわしとなり、音楽への開眼となった。まだ今でも暇を見つけてはハンダごてを持ち続けている。管球アンプの歪みは多く、性能は最新のアンプの足もとにもおよばないが、それの出す音は、現実をリアルに冷酷にただ再生するのではなく、心暖まる音楽のこころを伝えてくれるように私には思える。

さらにもう一つのわき道、いやこれは私の本道であろうが、京都の浄土真宗の末寺 の住職であり、休日には經を読む生活である。これから老後に向っての私自身の課題は語学文学の世界と科学技術、これは私にはアンプ作りであるが、そして宗教をいかに総合して行くかである。

最後にゲ-テの格言詩を一つ紹介したい。

学問と芸術をもつ者は   Wer Wissenschaft und Kunst besitzt,

  宗教をもつ,            Der hat auch Religion;

前の二つを持たざる者は Wer jene beiden nicht besitzt,

  宗教をもて。            Der habe Religion.

彼の臨終での最後の言葉は “ehr Licht! “「もっと光を!」であった。

21世紀に「もっと光を!」である。

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